さあ、マーケティング活動を強化していくぞ!となったとき、まずはできるだけ正確な現状把握をして、目標との差分を認識し、それをどのように埋めていくのか、という手段を検討していくという流れが一般的です。
その目標との差分が正確であればあるほど、マーケティングの戦略・戦術・打ち手はより正解に近づく(正解はないということは前提として)ことになります。
そこでつまづくのが「現状把握の精度」ではないでしょうか?精度の高いマーケティング活動をするための現状把握として
現状把握の方法
- 民力データ等のターゲットマクロデータの取得
- シンクタンクや広告代理店が持っている過去データ
- 自社にある過去データ
- Googleアナリティクス等のトラフィックデータ
- 広告実施の成果データ
- 顧客から得られた成約者アンケート
などがあげられると思います。
しかし、多くのデータは表面的な結果論的なものが多く、表面的になりがちです。そのデータがあったからといって、次の差分を正確に捉えることは難しいと言えます。また顧客のアンケートの多くも実際には、打ち手レベルまで改善できる情報が得られていないケースが多くあります。
数値データから、次の打ち手が見つかりにくい理由
なぜ、過去の数値データから、次の打ち手が見えにくいのか?それは、数値化された時点でユーザーの心理や心境がすべて省かれてしまうからです。
例えば、「資料請求をした人の数」というものが数値化されているケースは多くあると思いますが、その資料請求をした人の数=「資料請求をしようと思うほど魅力に感じてくれた数」となるはずです。例えば1年間の資料請求数だけを見る、月間の推移だけを見るだけでは、増えたね、減ったねということしかわからず、なぜ増えたのか?なぜ減ったのか?という深掘りがしにくいケースが多くあります。
できれば、増えたならなぜ増えたのか?ということまでが実際には情報として記録されているほうが、「キャンペーンというお得情報があったから増やすことができた」「新しいイベントを企画したが認知量が足りなくてCVが取れなかった」などの原因究明が明確になっていくはずです。
そういった意味で、マクロデータというのは、数字に丸め込まれすぎてしまって、ユーザー・ターゲットの心理・心境にアプローチするほどの情報が得られにくいという傾向もあるのです。
※マクロデータが必要ないということではありません。
顧客アンケートが改善レベルの情報まで提供できない理由
では、マクロデータがダメなら顧客データ(ミクロデータ)だ、となるのですが、この多くも正確にマーケティング戦略を改善できるほどの情報がない場合があります。その理由はアンケートの聞き方や内容によります。情報として有益になりにくいアンケートの一例は
- 自社の商品を選んでくれた理由だけを聞いている
これにつきます。
買ってくれた人に聞いているのだから、情報自体は間違っていませんが、そのデータをだけ見ると「うちは〇〇で売ってるんだ!」と強みと勘違いをしてしまうケースがあります。なぜ勘違いが生まれるかというと、単純な成約理由を聞く顧客アンケートでは、「買ってもらえなかった理由」に辿り着くことができないからです。
実際のマーケット環境では、ユーザーは複雑な心理変化を乗り越えて成約に至っていて、かつ様々な競合と比較検討がされているはずです。そんな環境に置かれていたユーザーに最後の結論だけを聞いても、良い答えが返ってくるのがあたりまえです。
その情報「だけ」を鵜呑みにして戦略を立てるのはただの自惚れた情報収集になってしまう可能性があるということです。
顧客アンケートを改善して、マクロデータと結びつける。
今回の記事ではマクロデータを否定するわけでもなく、顧客アンケートを否定するわけでもありません。顧客アンケートの改善によって、企業が得られる情報は格段によくなります、というお話です。
よくあるアンケートと、そこから得られる事象の例。
アンケートをとる際に気をつけたいことは、その多くが「結果」しか聞いていないということです。
- どんな媒体を見て来場されましたか?
- (自社の商品・サービスの特徴について)満足度は?
- スタッフの対応はいかがでしたか?(良い・普通・悪い)
といったアンケートを取ることが多く見られますが、この聞き方では結果しか得ることができず、なにか改善をしたい、強化をしたい、と思った時には情報としては薄いものになってしまいます。
なぜなら、
どんな媒体を見てきたのか?という答えについては、当然自分たちが露出している媒体しか回答を得ることができず、媒体を広げようと思ったときに、どの媒体に広げるのがいいのか?ということがわかりません。
商品の満足度は?という内容についても、結局は自社がアピールしていることしか選択されなかったり、満足度が低いと出た場合、それは単純にフォローすべきクレーム案件として処理することになります。商品をどんな方向性に修正していったらいいのか、そういった情報を得ることは難しいです。
スタッフの対応はどうだったか?という内容についても、多くの人が良い・普通にチェックをしてそれでおわり、ということになることが多いのではないでしょうか。
そういった意味で、よくあるアンケートというのは表面的な結果しか情報を得ることができないということが言えます。
より良い顧客アンケートとは「過去・現在・未来」軸で聞く
では、より良いアンケートの取り方の一例をご紹介します。良い質問の仕方は、過去・現在・未来の軸を組み合わせて聞くことです。人の多くは「ストーリー」を想像させると、答えやすくなるという傾向があり、それを意識して回答してもらうという流れを作ります。
まずは、媒体についての質問の仕方。
- 普段家づくりや住宅会社を探す際に活用している媒体はなんですか?(選択肢、複数回答)
- (我が社)を知ったきっかけになった媒体はなんですか?(選択肢、複数回答)
- (我が社)を見たことがある媒体はなんですか?(選択肢、複数回答)
- (我が社)を見た媒体の中で印象が良かったもの、参考になったものはどれですか?(選択肢、複数回答)
質問の仕方はいくつかありますが、このような聞き方がひとつ挙げられます。この質問の仕方は、まず過去から遡って聞いている方法になります。お客様にそもそも家づくりをはじめたときに使い出した媒体から想像してもらう。その流れの中で自社と出会った経緯を思い出してもらう。いきなり媒体を聞くのではなく、頭の中にストーリー性をつくるという手法になります。経緯から思い出してもらうことで、「あ、インスタで見たのが初めてだな。」「そういえばそのあと看板も見たな。」「あ、住宅性能の資料が良かったから来ようと思ったんだ。」とより具体的に思い出してもらうことができるのです。
アンケート範囲を広げることで、改善策が見つかる可能性が高まる。
そういった聞き方をすることによって、得られる情報は、階層があり幅も広がることがイメージできると思います。
複数の回答が集まると、「うちに来てくれているお客さんは、ピンタレストもよく見ているみたい」ということがわかってくると、自社の取り組みとしてピンタレストを強化すればターゲットにもっとリーチできるかも?という仮説ができます。
3番の見たことがある媒体の中に、一生懸命投資している媒体が含まれていなかったら、それは出稿を取り止めてもいいはずです。
アンケートの情報を、マクロデータ(数値データ)と重ねてみる。
こういったミクロデータとアナリティクスなどの数値データを重ねてみるとより、緻密な現状把握ができるはずです。
やけに歩留まりが高い媒体、費用はかけていないのにうまくいっていること、お客様が関心があるのにうまくつたわっていない動線やコンテンツ。などなど。
あるいは商品に対するフィードバックであれば、実際のエリア棟数ランキングや競合先との商品比較が鮮明に可能になって、自分たちがどの方向に商品を強化・改善すべきなのかが見えてくるかもしれません。
このように、アンケートを改善することで、マーケティングの可能性は大きく広がるとマーケティングデパートメントでは考えています。アンケートの改善に興味があれば、ぜひご相談ください。